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【公民連携】データを利用したまちづくり(後編)

このシリーズは?
「人と企業に選ばれるまち」を目指す裾野市が、連携協定を締結している企業や団体との取り組みについて発信します。

今回の公民連携は、データを利活用による裾野市のまちづくりについて(後編)です。

前編の公共交通に続いて今回はカーボンニュートラルに関する取り組みを紹介します。

(前編のリンク)

“カーボンニュートラル“と聞くと、なんとなく環境問題のことかな……と思っている人、多くないですか?

まずはカーボンニュートラルって? というところから生活環境課の井伊主席主査に話を聞きました。

生活環境課の井伊主席主査

――カーボンニュートラルとは、いったい何なのですか。

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いて、全体として温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることです。

――裾野市は温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするために、どのようなことに取り組んでいますか。

裾野市は令和3年10月に「カーボンニュートラルシティ宣言」をしましたが、何を、いつまでに、どのように取り組むのかは決まっていませんでした。

そこで、令和4年度に1年間かけて、カーボンニュートラルシティを実現するための道筋を示すロードマップを作成しました。

――カーボンニュートラルシティを実現するためのロードマップは、どのようにして作られたのですか。

ロードマップの作成には、市民や行政だけでなく、市内事業者の協力が不可欠でした。

なぜなら、市内の温室効果ガスの約半分が産業部門から排出されているからです。

裾野市におけるCO2排出量の部門別割合
(「2050年カーボンニュートラルシティ実現に向けたロードマップ」から抜粋)

産業部門の排出量を減らすことができれば、市のカーボンニュートラル実現に近づけるのではないか、と考えました。

そこで、まずは市内事業者等と「カーボンニュートラル勉強会」を立ち上げ、産業部門の排出量をどうやって減らせるか議論してきました。

この勉強会の活動を通じて、公民連携によるロードマップが完成しました。

(ロードマップ作成の取り組みについて、下の記事でも取り上げています)

カーボンニュートラルシティ実現に向けたロードマップ(広報すその令和5年6月号)

――ロードマップを作成する上で、市民の皆さんに伝えたいことは何ですか。

ロードマップでは「仕組み」「ひと」「技術」の3つの柱を立てて、カーボンニュートラルの実現を目指しています。

このうち「ひと」というのは、事業者を含む市民一人ひとりの参加が必要であること次代を担う層の育成をすることを意味していて、この2つに重点を置いています。

「オール裾野」でカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいこうという意識を高め、「一人ひとりができる範囲で省エネや創エネ(※)に向けた行動をしていきましょう」ということを伝えたいです。

――民間事業者と連携することで、市民にどのような効果をもたらしますか?

温室効果ガスの代表である、目に見えないCO2を「見える化」しないと、現状でCO2をどれぐらい排出しているのか、また、今後どれぐらいCO2を削減すれば良いのかが実感として分からず、市民の理解が得られないのではないかと感じていました。

見える化のためには、CO2排出量のデータ集めることと、集めたデータを分析することが必要です。

データを集めると言っても、どのように集めるのか、集めたデータをどのように分析し、分かりやすく見える化するのかが課題となっていました。

この課題を解決するためには、専門知識やノウハウを持つ市内事業者の協力が不可欠でした。
幸いなことに「カーボンニュートラル勉強会」によって関係性を築いた事業者との連携によって、CO2の見える化も徐々にできてきています

今後は、CO2排出量の見える化を通じて、カーボンニュートラルに向けた取組みをより分かりやすく市民の皆さんに説明することによって、市民の皆さん自身のライフスタイルの見直しや行動変容に役立てていただきたいと考えています。

この取組みは、環境にやさしい生活の実践や、災害時の対策にもつながっていくものと考えています。


では、公民連携の民間の関わり方として、トヨタ自動車(株)未来創生センターの北浜さんに話を聞きました。

トヨタ自動車(株)未来創生センターの北浜さん

――民間としてどのような企業が関わっていて、どのような役割を果たしているのですか。

トヨタ自動車(株)未来創生センターはデータ解析技術で協力させていただいています。

また、みずほリサーチ&テクノロジー(株)や(株)エックス都市研究所は、様々な自治体のカーボンニュートラルの取り組みの調査・分析を行っており、裾野市の取り組みの方向性についてアドバイスをいただいています。

さらに、市内の特定排出事業者(CO2の排出量が、ある一定規模を超えている事業者)として、矢崎総業(株)、キヤノン(株)、トヨタ自動車東日本(株)、MAアルミニウム(株)、(株)ヤクルト、トヨタ自動車(株)東富士研究所も、定期的に情報交換を行うなど、本取り組みに関わっていただいています。

市全体としてカーボンニュートラルを実現するためには、企業の皆様の協力も必要になるため、多くの企業に関わっていいただいています。

――データの利活用はどのような場面で活かされていますか。

CO2の排出量を削減するにあたり、まず、自分たちが排出しているCO2の量を正確に把握することが重要です。

これまでは、按分法という、簡易的な手法で排出量を見積もっていました。

国が定める手法なのですが、企業でいえば売上や従業員数、家庭でいえば世帯数などに応じて比例配分して算出するので、企業の環境対策の努力や、各家庭の省エネ行動などを数字として表現することができませんでした。

そこで我々は、まずは家庭からのCO2排出量を正確に把握することから始めることにしました。

――現在の取り組みについて教えてください。

各家庭では、電気やガス、灯油、車のガソリンなど、様々なエネルギーを消費する過程でCO2を排出しています。

1件1件のエネルギー消費量のデータを集めることができればいいのですが、市内でもおよそ2万世帯あり、現実的ではありません。

そこで、まず、市内在住の市役所の職員や議員を中心に、アンケートによってエネルギー消費量を調査しました。

約200世帯から回答があり、全世帯の1パーセントではありますが、大変貴重なデータが集まりました。

現在、データの分析中ですが、地域による違い(東地区、西地区、富岡地区、深良地区、須山地区)、住居形態による違い(一戸建て、集合住宅、築年数など)がデータで可視化できる可能性が見えてきています。

引き続き、データの分析を進め、市のCO2排出量をより正確に可視化するための計算方法を確立し、市の課題や今後の対策の方向性を見つけていきたいと考えています。

地区別1世帯当りの年間CO2排出量
住居形態別1世帯当りの年間CO2排出量
住まいの築年数別CO2排出量
家族構成別1世帯当りの年間CO2排出量

――この取り組みの目指すゴールのイメージを教えてください。

カーボンニュートラルは、自分事として捉えることが難しいテーマだと感じています。

一人ひとりが環境を意識した行動をとっても、それが実際にどれほどの効果があるのか、また、その効果がすぐに現れることがないため、どうしても自分とは関係が無いテーマと思いがちです。

ただ、最近の猛暑や風水害など、温暖化が原因と思われる異常気象を肌で感じることも多くなってきました。

カーボンニュートラルは、一人ひとりが当事者意識をもって行動することが重要であり、また、その行動変容と継続が一番難しい課題でもあります。

データによる可視化が当事者意識向上につながるかもしれませんが、それだけでは十分でありません。

学校における環境教育など、当事者意識を高める取り組みを今後、市役所の皆さんと考えていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

カーボンニュートラルに関する取り組みを初めて聞いたときは、本当に2050年までにCO2 を含む温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることなんてできるのだろうかと思いました。

しかし、市が排出する温室効果ガスの排出量を見える化するデータ分析や、現在の排出量から逆算してゴール設定する取り組みを聞いて、夢じゃなくて実現に向けて動いているという実感を持ちました。

私自身もそうですが、市全体で取り組むことが第一ですね。

最後に

データ利活用による裾野市のまちづくりに関する連携協定について、前編・後編と2回に分けてお伝えしました。

文系の私は、正直に言いますとデータ利活用による分析やシミュレーションは苦手なんです・・・・・・

でもここで紹介したデータ利活用の取り組みは、データ利活用によって実現したいゴール、そして何よりそのゴールに向かって議論しあう人たちの熱い想いがありました。

「ありたい姿を実現したい」という想いを持ったデータ利活用は、市民の皆さんの生活を豊かにしてくれるに違いないと感じました。

この記事は令和6年3月に執筆しました。


この記事を書いた人

■安倍健
富士の麓裾野市で地元小中学生と陸上長距離に励む自称公務員ランナーです。
フルマラソンで2時間35分を切って福岡国際マラソンに出場することが生涯の目標です。


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